2016年7月24日日曜日

さいあく【最悪】

青空文庫を拾い読みしていて、見つけた「最悪」の用例。


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世に御難いものとて人間の作った沙漠のごときはありません。 
もしユトランドの荒地がサハラの沙漠のごときものでありましたならば問題ははるかに容易であったのであります。 
天然の沙漠は水をさえこれに灑(そそ)ぐを得ばそれでじきに沃土(よきつち)となるのであります。しかし人間の無謀と怠慢とになりし沙漠はこれを恢復するにもっとも難いものであります。 
しかしてユトランドの荒地はこの種の荒地であったのであります。今より八百年前の昔にはそこに繁茂せる良き林がありました。しかして降くだって今より二百年前まではところどころに樫の林を見ることができました。 
しかるに文明の進むと同時に人の欲心はますます増進し、彼らは土地より取るに急(きゅう)にしてこれに酬(むく)ゆるに緩(かん)でありましたゆえに、地は時を追うてますます瘠せ衰え、ついに四十年前の憐むべき状態ありさまに立ちいたったのであります。 
しかし人間の強欲をもってするも地は永久に殺すことのできるものではありません。神と天然とが示すある適当の方法をもってしますれば、この最悪の状態においてある土地をも元始の沃饒に返すことができます。 
まことに詩人シラーのいいしがごとく、天然には永久の希望あり、壊敗はこれをただ人のあいだにおいてのみ見るのであります。 

内村鑑三「デンマルクの話 信仰と樹木とをもって匡を救いし話」 
(青空文庫)
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人間が「最悪の状態」にしたというユトランドの大地がその後どうなったのか、画像検索をして探してみているのだけど、第一次世界大戦の「ユトランド沖戦線」の写真や動画がたくさん出てきて、森林の写真がなかなか見つからない。

「ユトランド沖戦線」は、1916年に、ドイツとイギリスの主力艦隊同士が激突して、双方に多大な損害が出た戦いだという。どちらの国にとっても、「最悪」な事態だったことだろう。




内村鑑三の文章とは何の関係もないけど、デンマークの地理庁がマインクラフトで自国を正確に再現したデータが、ユーザーによってあちこち破壊されたという記事なら見かけた。


『Minecraft』デンマーク地理庁が国土を再現したワールドで首都爆撃 ― 跡地にはアメリカ国旗 

https://www.gamespark.jp/article/2014/05/12/48438.html

海外メディアThe Registerが伝えた所によると、爆撃されたのはデンマークの首都コペンハーゲンの一部。跡地にはアメリカの国旗や戦車が設置されており、現場は凄惨たる有り様となっています。爆破禁止であったはずのデンマーク国土ですが、迂闊にもTNT付きトロッコがアクティブとなっていたとのこと。そのことを発見したプレイヤーは速やかに爆撃を開始し、都市を破壊してしまったようです。 
一時、再起動を行い破壊行為に伴いワールドを一新することが考えられましたが、地理庁の広報担当者Chris Hammeken氏は「都市全体が更地にされたわけではない。(ワールドには)新しい建物が追加されているため、『Minecraft』の性質を考え再起動はしない。新しいものが作成されていない場所では、時々再構築を行うけどね。」と語っています。(記事の一部を引用)


シラーや内村鑑三が見たなら壊敗はこれをただ人のあいだにおいてのみ見る」と、より強い確信を持って書き記すかもしれない。


なにともあれ、ワールドをリセットするという、ゲーム内での「最悪」の状態が回避されたようで、よかった。





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